菅谷(2010)
日本語の動詞活用が項目学習であるのか、あるいは規則学習であるのかを検討するために、造語動詞と実在後動詞を用いた活用テストを実施した。調査対象者は41名の留学生で、日本語レベルにより上位、中位、下位に分けた。分析の結果、実在語の正答率は造語よりも優位に高く、どちらも日本語レベルが上がるに従って正答率も上がっていた。また、造語動詞では、語尾の一致する実在語がない「かぷ」がほかの造語(「ほむ」「ほく」「むる」)よりも優位に低くなっていた。以上から、日本語の動詞活用においては、トップダウンで規則を適用する能力と、一つ一つの活用形を記憶する項目学習の働きの両者が関わっていると推測される。そして、Klafehn(2003)による日本語母語話者を対象とした調査と比較した結果、動詞活用の処理方法が、日本語学習者は項目学習の傾向が強く、日本語母語話者は、規則学習の傾向があることが示唆された。